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関節は「最後まで動くか」だけでは足りない|MMCが見る“動き始め”の重要性
執筆: 長澤一輝, D.C.
米国Cleveland Chiropractic College卒業/Doctor of Chiropractic(D.C.)専門職学位取得/臨床歴25年以上/活動拠点: 銀座・虎ノ門エリア、福岡天神
YouTube: https://www.youtube.com/@Nagasawa_Drofchiropractic
こんにちは、Dr.Kazです。関節が動きにくい時、多くの場合は「どこまで曲がるか」「最後まで伸びるか」という可動域の終点に目が向きます。もちろん、それも重要です。でも私がMicro Motion Care(MMC/マイクロモーションケア)で見ているのは、そのもっと手前です。関節が大きく動き始める前の、ごく小さな“初動”がどうなっているかです。
LIVEではスーパーのカートを例にしました。カートを引き出そうとしても動かない。よく見ると、下の車輪が進みたい方向とは違う方向を向いている。つまり大きく動かしてから問題が起きたのではなく、動き出す前から「このままでは進みにくい状態」ができていたわけです。私は身体の関節にも、これと似たことが起こる可能性があると考えています。
可動域の「最後」ではなく「最初」を見る
例えば指が100度曲がるはずなのに70度しか曲がらない。この時、多くの方法では残り30度をどう増やすかを考えます。ストレッチをする、筋肉を緩める、関節を大きく動かす。これはEnd range(エンドレンジ/可動域の最終域)を見る考え方です。
一方、MMCではその前を見る。「そもそも0から動き始める瞬間はどうなのか?」という考え方です。
関節には大きな運動が始まる前にも、ごく小さなJoint play(関節の遊び)があります。私は、その非常に小さな運動領域に方向性の問題や抵抗感がないかを確認します。ここに違和感があるなら、大きな動きを無理に最後まで持っていく前に、最初の動きを確認した方がいいのではないか。これが現在のMMCの基本的な考え方です。
スーパーのカートは「動く前」から決まっている
LIVEで使ったスーパーのカートの例は、MMCの考え方をかなり分かりやすく表しています。
車輪が真っすぐ向いていれば、少ない力でスッと動きます。でも車輪が横を向いていれば、力いっぱい引っ張ってもガッと引っかかります。
ここで「もっと強く引っ張ろう」とするのか。それとも「まず車輪の向きを整えよう」とするのか。
私は後者です。
身体の場合、本当にカートの車輪と同じ構造があるわけではありません。これはあくまで説明のための例えです。でも臨床では、「動かない関節を最後まで強く動かす」前に、「動き始める瞬間に何が起きているか」を確認する価値があると考えています。
なぜMMCは低刺激なのか
MMCで扱うのは非常に小さな動きなので、大きな力を必要としません。LIVEでも「最初を見るから、そんなに動かさない」と話しました。
私は関節が動きにくくなる背景の一つとして、Guarding(ガーディング/身体を守るための筋緊張)や、本人が意識していない微細な防御反応が関わっている可能性を考えています。私はこれを臨床上「Micro Defense(マイクロディフェンス/微細な防御)」という言葉で整理しています。
これは現時点で私が構築しているMMCの臨床理論であり、医学的に確立された診断名ではありません。
一方、徒手療法によって末梢組織だけではなく、脊髄や脳を含む複数の神経生理学的反応が生じる可能性については研究されています。ただし、どの反応が実際の臨床効果につながるのかは、まだ十分に解明されていません。
86歳の方にMMCを使った実際のケース
LIVEでは、86歳の方へMMCを使用した経験も話しました。病気をきっかけに身体を動かす機会が減り、その後、身体を起こしたり歩いたりすることがかなり難しくなっていました。
その時は通常の施術環境ではなく、大きな機器も持ち込めませんでした。そのためカイロプラクティックの通常のAdjustmentではなく、MMCを全身の関節へ使いました。
その場では身体を起こしやすくなり、自分で歩いてトイレへ行けるところまで動きが変化しました。これは私が実際に経験した一例であり、MMCを行えば高齢者全員が歩けるようになるという意味ではありません。
むしろ私が注目したのは、「筋力を大きく変えたわけではないのに、その場で動作が変わった」という部分です。ここからも、単純に筋力だけでは説明できない身体の動きがあると私は考えています。
私が将来、介護領域でも使いたい理由
例えば高齢の方が、肘があと少し曲がれば自分でスプーンを口まで運べる。それだけでも本人や家族の負担はかなり変わります。
何十度も可動域を増やす必要はないかもしれません。数度、数センチ動きが変わるだけで、その人ができる動作が一つ増える可能性があります。
私はMMCを「病気を治す技術」として考えているわけではありません。関節の初動を確認し、ごく小さな刺激によって動作をサポートできる可能性のある技術として育てたいと考えています。
将来的には専門家だけではなく、家族介護の中でも安全に使える範囲を作れないか。これは現在の私がMMCに持っている一つの目標です。
カイロプラクティックとMMCは同じではない
私の臨床の中心はカイロプラクティックです。History(ヒストリー/問診)、動作確認、Motion palpation(モーション・パルペーション/関節を動かしながら行う触診)からサブラクセーション(Subluxation/骨格のズレ)を考え、必要であれば方向と力を選んだAdjustment(アジャストメント)を行います。
一方、MMCでは大きなAdjustmentを行う前の、より微細な運動領域を見ます。
どちらが優れているという話ではありません。身体の状態によって使うものが違うということです。
そして重要なのは、どの方法を選んでも、その後に同じ動作をもう一度Reassessment(再評価)することです。「やったから効いたはず」ではなく、実際に身体がどう変わったかを見る。私はそこを最も大切にしています。
このテーマをLIVEで話した部分
MMCとは何か、可動域の最終域ではなく初動を見るという話 38:56~
https://www.youtube.com/watch?v=mGOvi1JCF2U&t=2336s
スーパーのカートを使った「動く前」の説明 40:02~
https://www.youtube.com/watch?v=mGOvi1JCF2U&t=2402s
MMCが低刺激である理由と高齢者への考え方 41:05~
https://www.youtube.com/watch?v=mGOvi1JCF2U&t=2465s
介護領域でMMCを使いたいという今後の構想 43:28~
https://www.youtube.com/watch?v=mGOvi1JCF2U&t=2608s
参考資料
Keter DL, Bialosky JE, Brochetti K, et al. The mechanisms of manual therapy: A living review of systematic, narrative, and scoping reviews. PLOS ONE. 2025;20(3).
徒手療法では末梢組織、脊髄、脳など複数の身体システムに反応が起こり得ることがまとめられています。一方で、それらの反応と臨床効果との因果関係にはまだ不明な点が残っています。本研究はMMCそのものを検証したものではありません。
この記事の一次情報
本記事はDr.KazのLIVEで、Micro Motion Care(MMC)の考え方について解説した内容をもとに構成しています。
元動画
https://www.youtube.com/watch?v=mGOvi1JCF2U&t=1826s
ご相談・ご予約
「関節を動かしているのに最後まで動きにくい」「強い刺激は怖い」「高齢で大きなアジャストメントには不安がある」。私は大きな動きだけではなく、その手前にある微細な初動まで確認し、身体の状態に合わせて方法を選びます。
施術案内
https://www.dr-chiro-nagasawa.com/treatment/
料金案内
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