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しびれは一か所の神経圧迫だけで決めない|ダブルクラッシュという考え方
執筆: 長澤一輝, D.C.
米国Cleveland Chiropractic College卒業
Doctor of Chiropractic(D.C.)専門職学位取得
臨床歴25年以上
活動拠点: 銀座・虎ノ門エリア、福岡天神
YouTube:
https://www.youtube.com/@Nagasawa_Drofchiropractic
こんにちは、Dr.Kazです。
手や足がしびれると、「ここで神経が圧迫されています」「MRIにヘルニアがあります」と、一か所に原因を求めたくなります。
もちろん、本当に一か所の問題で説明できることもあります。
しかし私は臨床で、しびれを最初から一か所だけの問題として考えないようにしています。
神経は首や腰から手足の末端まで連続しています。途中の複数地点で神経への負担が重なる可能性もあります。
こうした考え方の一つがDouble Crush Syndrome(ダブルクラッシュ症候群)です。
ただし、ダブルクラッシュは「二か所あれば原因確定」という単純な理論ではありません。現在も診断基準や病態には議論があります。
だからこそ重要なのは病名を増やすことではなく、「しびれている場所だけを見て終わらないこと」だと私は考えています。
ダブルクラッシュとは何か
ダブルクラッシュとは、一つの末梢神経の経路上に複数の障害・圧迫部位が存在する状態を説明するために使われる概念です。
たとえば首側の神経根と、肘や手首付近の末梢神経の両方が関係する、といった考え方です。
ただし医学的には、ダブルクラッシュの発生頻度は研究によって大きく異なり、病態や診断基準も統一されていません。
2025年のレビューでも、報告される発生率は6.7〜73%と非常に幅があり、明確な診断基準がないこと、治療方針にもコンセンサスがないことが指摘されています。
つまり、私は「ダブルクラッシュだから間違いない」と言いたいわけではありません。
反対です。
一か所の画像所見だけで全部を説明することにも、複数箇所説だけですべてを説明することにも慎重であるべきです。
画像にヘルニアがあっても、それだけで症状の原因とは限らない
このLIVEでは、ヘルニアについても話しました。
ここは以前から私が繰り返し伝えている部分です。
ヘルニアがあり、症状もある人がいます。
ヘルニアがあっても症状がない人もいます。
そして画像上の大きな異常がなくても、痛みやしびれを訴える人もいます。
実際、無症状者を調べた系統的レビューでは、椎間板変性や膨隆、突出などの画像所見は症状のない人にも高い割合で確認されています。
たとえば無症状者でも椎間板突出は20歳で約29%、80歳で約43%と報告されています。画像所見は重要ですが、患者さんの症状や身体所見と合わせて解釈すべきだと研究者も結論づけています。
だから私はMRIを否定しません。
MRIは非常に重要です。
ただし「写っているもの」と「現在症状を出しているもの」は、必ずしも同義ではありません。
私がしびれで最初に確認すること
しびれではHistory(ヒストリー/問診)が特に重要です。
どこからどこまでしびれるのか。
いつ始まったのか。
首や腰の動きで変化するのか。
手や腕、脚の位置によって変わるのか。
過去にケガをしていないか。
スポーツ、仕事、長時間姿勢との関係はないか。
画像検査を受けているなら、何が写っていたのか。
こうした情報をつなぎます。
そのうえでROM(関節可動域)、筋力、感覚、症状の出る動き、左右差などを確認し、必要に応じて医療機関での検査を優先します。
突然の強い筋力低下、排尿・排便障害、歩行障害、広範囲に急速に進むしびれなどがある場合は、カイロプラクティックより医療機関が先です。
カイロでは「どこが動いていないか」を見る
医療上の緊急性がなく、関節運動や身体の連動を確認する段階では、私はMotion palpation(モーション・パルペーション/関節を動かしながら行う触診)を使います。
ここで確認しているのは、単に「骨が曲がっているか」ではありません。
どの関節がどの方向へ十分に動いていないのか。
そのために周囲がどのように代償しているのか。
首、胸椎、肩、骨盤、腰、股関節などを症状に応じてつないで考えます。
私がサブラクセーション(Subluxation/骨格のズレ)として重視するのも、この関節運動と代償の問題です。
必要であれば、確認した関節と方向に対してAdjustment(アジャストメント)を行います。
目的は音を鳴らすことではありません。
そして重要なのはReassessment(再評価)です。
最初に出ていたしびれ、動作、ROM、本人の感覚をもう一度確認します。
軟部組織側も無視しない
神経は骨だけの中を通っているわけではありません。
筋肉や筋膜周辺など、さまざまな軟部組織の間を通過します。
そのため私は、関節側だけで説明できない場合は軟部組織側も確認します。
メディセルは皮膚を吸引しながら動かし、皮膚、皮下組織、筋膜周辺を含む軟部組織の動きやすさや滑走性、左右差を確認するために使っています。
LIVEでも「しびれは一か所で考えない方がいい」という話の中で、軟部組織側の動きも含めて考える話をしました。
ここで私は「筋膜が神経を圧迫している」と触っただけで断定するわけではありません。
また、メディセルで神経障害が治ると保証するものでもありません。
関節側の動きだけでは説明できない抵抗が残る場合に、もう一つの確認材料として使うということです。
当院でカイロプラクティックとメディセルのコンビネーションを重視している理由はここにあります。
一か所を施術して変わらなかったからといって、すべてが無効とは限らない
首を施術した。
腰を施術した。
手首を施術した。
それでもしびれが残った。
こうした時、「その方法は全部ダメだった」と考えたくなるかもしれません。
しかし私は、対象にしていた場所が本当に全部だったのかを考えます。
関節なのか。
軟部組織なのか。
あるいは医学的な神経障害なのか。
一か所だけを見続けるより、神経の経路と身体全体の連動を考え直す意味があります。
一方で、すべてをカイロプラクティックで解決できるわけでもありません。
神経を直接障害する疾患、脊髄症、強い神経根障害などは、医療機関での評価が必要です。
ここを混同してはいけません。
FAQ
Q. MRIでヘルニアが見つかったら、そこが原因ではないのですか?
原因である場合もあります。しかしヘルニアや椎間板変性は無症状者にも認められます。症状の場所、神経学的所見、身体の動きなどと合わせて考える必要があります。
Q. ダブルクラッシュなら二か所施術すれば良くなりますか?
そう単純ではありません。ダブルクラッシュ自体、診断基準や病態について議論があります。まず「複数地点が関係する可能性もある」という視点として使うべきだと私は考えています。
Q. カイロとメディセルは必ず両方受けた方がいいですか?
必ずではありません。関節運動が中心ならカイロを優先することもありますし、軟部組織側の抵抗が強ければメディセルを組み合わせることもあります。施術後の再評価を見ながら選びます。
この記事の結論
しびれを一か所の画像所見だけで決めつけるのは早い場合があります。
ダブルクラッシュという「複数地点で神経へ負担が重なる」という考え方は存在しますが、医学的にもまだ議論があります。
だから私が大切にしているのは、病名を決めつけることではなく、History、身体の動き、関節運動、神経の経路、軟部組織をつなげて確認することです。
カイロプラクティックで関節側を確認し、必要ならメディセルで軟部組織側も確認する。
そして施術後にもう一度同じ症状や動きを確認する。
これが、しびれを「一か所だけ」で考えない私の臨床スタイルです。
動画で話している箇所
しびれと複数の神経圧迫、Double Crushについて
8分40秒頃〜12分57秒頃
参考資料
Double Crush Syndrome: A Review of the Literature
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40684370
Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4464797
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