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膝が伸びないのは筋肉だけが原因じゃない|ストレッチで変わらない時に私が見る「防御」の反応
執筆: 長澤一輝, D.C.
米国Cleveland Chiropractic College卒業/Doctor of Chiropractic(D.C.)専門職学位取得/臨床歴25年以上/活動拠点: 銀座・東銀座エリア、福岡天神
YouTube: https://www.youtube.com/@Nagasawa_Drofchiropractic
こんにちは、Dr.Kazです。「膝が伸びない」「曲げ伸ばしがしにくい」と感じた時、多くの方が最初に考えるのは「筋肉が硬いからでは?」ということだと思います。そしてストレッチをしたり、マッサージをしたりする。もちろん、それで変わるケースもあります。
でも私は、膝が伸びない理由を筋肉の硬さだけでは考えません。関節そのものの動き、軟部組織、痛みや腫れ、そして神経系による防御反応まで含めて考えます。
LIVEではこれをかなり単純化して、「脳が危ないと判断すると筋肉にロックをかけることがある」と話しました。これは「脳が意識的に命令している」という意味ではありません。身体が関節を守るために筋活動を変え、結果として動きにくさが出ることがある、という意味です。
「硬い筋肉を伸ばせばいい」だけではない
筋肉が本当に短縮していて膝が伸びにくいのであれば、ストレッチが役立つことはあります。でも、筋肉が硬く感じることと、その筋肉自体が原因であることは同じではありません。
例えば関節に痛みや腫れがあると、関節から神経系へ入る感覚情報が変化し、筋肉を十分に働かせにくくなる現象があります。膝ではArthrogenic Muscle Inhibition(AMI/関節原性筋抑制)と呼ばれる現象が知られていて、膝関節の問題によって大腿四頭筋の活動が抑制されることがあります。
研究では、膝関節内に液体を入れて腫れを再現しただけでも、大腿四頭筋の活動や膝伸展筋力が低下することが報告されています。
つまり身体は、「筋肉というゴムが硬くなっただけ」で動いているわけではありません。関節から入る情報と神経系、筋肉が常にやり取りしながら動きを調整しています。
LIVEで話した「微細なロック」という考え方
私は臨床では、もっと軽い段階にも注目しています。
ものすごく痛いわけではない。腫れているわけでもない。でも、「なんとなく伸びきらない」「以前より動かしにくい」「少し引っかかる」「左右で感覚が違う」。
こういう時、私はGuarding(ガーディング/身体を守るために筋肉を緊張させ、動きを制限する反応)が起きていないかを考えます。
身体にとっては、無理に最後まで動かすより、少し筋肉を緊張させて可動域を制限した方が安全な場合があります。LIVEではこれを分かりやすく「脳がロックをかける」と表現しました。
重要なのは、筋肉が硬くなっていること自体を否定することではありません。「なぜ硬くなっているのか?」まで考えることです。
膝を最後まで伸ばす前に「動き始め」を見る
私はMicro Motion Care(MMC/マイクロモーションケア)で、関節が大きく動き始める前の非常に小さな運動領域にも注目しています。
膝が伸びないと、多くの場合は「あと何度伸びるか」「最後まで伸びるか」という最終可動域に目が行きます。でも私は、その前段階のごく小さな動きがどうなっているのかも確認します。
最初の動きがスムーズなのか。ある方向だけ抵抗感が違うのか。左右で感覚が違うのか。そこへ低刺激・低速の微細な運動入力を行った後、動きがどう変化するのかをReassessment(再評価)します。
MMCについては現在、私自身が臨床経験をもとに理論を整理している段階です。「MMCを行えば神経系のロックが解除される」ということが医学的に確立されているわけではありません。
一方で、「関節からの感覚入力が筋活動へ影響する」という考え方自体は、膝のAMIなどでも研究されています。また、徒手療法によって末梢・脊髄・脳を含む神経生理学的な反応が起こる可能性も研究されています。ただし、その変化が臨床効果を生み出す仕組みについては、まだ分かっていない部分が多く残っています。
事故後の手首でも同じ考え方を使いました
このLIVEの直前、バイク事故で左腕を骨折した後、反対側の右手をかなり使うようになり、手首の痛みと指の動かしにくさ、握力低下を訴えていた方を見ていました。
私はこのケースで、最初から強いアジャストメントを選びませんでした。事故による負荷もあり、本人も動かすことにかなり警戒感があったからです。
そこで手首、指、中手骨周辺などにMMCを行い、ある方向の引っかかりを確認しながら微細な動きを入れていきました。15〜20分ほど行ったところ、その場では握りにくかった指に力が入りやすくなりました。
もちろん、これだけで原因が確定したわけではありません。事故後のケースなので経過を見る必要がありますし、骨折や組織損傷など医学的に確認すべき問題がある場合は医療機関が優先です。
でも私にとって重要なのは、「動かない=硬いから強く伸ばす」という一方向だけで考えなかったことです。
カイロ・メディセル・MMCは同じことをしているわけではない
私は現在、身体の状態によってカイロプラクティック、メディセル、MMCを使い分けています。
カイロプラクティックでは、History(ヒストリー/問診)から始め、関節可動域や左右差、Motion palpation(モーション・パルペーション/関節を動かしながら行う触診)を通して、どの関節がどの方向の動きへ十分に参加できていないのかを確認します。そこからサブラクセーション(Subluxation/骨格のズレ)が関係している可能性を考え、必要な場合は方向と力を選んだAdjustment(アジャストメント)を行います。
一方、皮膚・皮下組織・筋膜周辺など軟部組織側の動きにくさが強い場合にはメディセルを使います。そして、大きく動かすよりも微細な関節運動から確認した方がいいと判断した場合にはMMCを使います。
どれか一つが全部に効くとは私は考えていません。実際、LIVEでも「ストレッチだけでもない、アジャストメントだけでもない」と話しています。
身体を見て、どの方法が今の状態に合っているのかを選び、その後にもう一度同じ動きを確認する。ここまでが重要です。
膝が伸びない時、私が最初に確認すること
膝が伸びない人全員に同じ施術をするわけではありません。いつから伸びないのか。ケガや手術歴はあるのか。痛みや腫れはあるのか。完全に動かないのか、それとも「なんとなく最後が伸びない」のか。左右差はどうか。歩く時はどうか。
そして実際に関節を動かし、膝だけではなく股関節や足関節を含めた連動も確認します。
本当に筋肉の短縮が中心なら、それに合った方法が必要です。関節の構造的な問題が疑われるなら医療機関での画像検査が必要になる場合もあります。関節運動やサブラクセーションが関係していると考えればカイロプラクティックを選び、軟部組織側ならメディセル、微細な運動制御を確認したければMMCというように分けます。
「膝が伸びない」という一つの症状でも、入口が違えばやることも変わります。
ストレッチしても戻るなら、一度「なぜ硬いのか」を考えてみる
ストレッチが悪いわけではありません。マッサージが悪いわけでもありません。それで変わるなら、それでいいと思います。
でも、何度伸ばしてもすぐ戻る。揉んでもまた硬くなる。左右で明らかに伸び方が違う。以前より可動域が落ちてきた。
そういう時は「もっと強く伸ばせばいい」と考える前に、一度立ち止まって、「この筋肉は、なぜ硬くなっているんだろう?」と考えてみてください。
筋肉そのものが原因なのか。関節なのか。軟部組織なのか。それとも身体が何かを警戒して、動きを制限しているのか。
私はそこを分けて身体を見ています。
このテーマをLIVEで話した部分
膝が伸びない理由について話し始めた部分 03:49~
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM&t=229s
事故後の手首・指にMMCを行った臨床例 04:56~
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM&t=296s
動かない・伸びない時に「初動」を見るという話 07:04~
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM&t=424s
筋肉だけでなく神経系による防御を考える話 08:09~
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM&t=489s
膝が伸びない理由をまとめた部分 09:13~
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM&t=553s
参考資料
Rice DA, McNair PJ, Lewis GN. Quadriceps arthrogenic muscle inhibition: the effects of experimental knee joint effusion on motor cortex excitability. Arthritis Research & Therapy. 2014;16:502.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4271337/
膝関節の損傷、手術、病変などの後にみられる大腿四頭筋の神経性の活動低下、Arthrogenic Muscle Inhibition(AMI)を扱った研究です。関節から入る情報と筋活動の関係を考えるうえで参考になります。
Keter DL, et al. The mechanisms of manual therapy: A living review of systematic, narrative, and scoping reviews. PLOS ONE. 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40100908/
徒手療法によって末梢・脊髄・脳を含む複数の神経生理学的反応が起こる可能性が示されていますが、それらが臨床効果を生む仕組みはまだ十分に確立されていません。本記事で説明したMMC独自の理論を直接証明する研究ではありません。
この記事の一次情報
本記事は、2026年10月1日のLIVE「膝が伸びないのは筋肉だけが原因じゃない!」で私が話した内容をもとに構成しています。
元動画
https://www.youtube.com/watch?v=UZgIk4G8ySM
ご相談・ご予約
「膝が最後まで伸びない」「ストレッチしてもすぐ元に戻る」「痛みは強くないけれど左右で動きが違う」。こうした場合、筋肉だけではなく、関節運動、骨格の連動、軟部組織、身体の防御反応まで分けて確認してみる意味があります。
施術案内
https://www.dr-chiro-nagasawa.com/treatment/
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