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骨盤は本当に歪むのか|仙腸関節は動くが、見た目だけでは判断できない
執筆: 長澤一輝, D.C.
米国Cleveland Chiropractic College卒業
Doctor of Chiropractic(D.C.)専門職学位取得
臨床歴25年以上
活動拠点: 銀座・虎ノ門エリア、福岡天神
YouTube
https://www.youtube.com/@Nagasawa_Drofchiropractic
こんにちは、Dr.Kazです。
「骨盤は歪むのでしょうか」と聞かれたら、私は「骨盤を構成する関節には小さいながらも動きがあり、その動きに左右差や制限が生じることはあります」と答えます。
ただし、骨盤全体が柔らかい板のようにグニャリと変形するわけではありません。鏡で見た高さ、脚の長さ、触った印象の一項目だけで「骨盤が歪んでいます」と決めることにも反対です。
骨盤を見るうえで重要なのは、見た目の傾きではなく、仙腸関節がどの方向へ動きにくくなり、身体のどこがその動きを補っているのかです。
目次
仙腸関節は動かない関節ではありません
骨盤は、中央にある仙骨と左右の寛骨などから構成されます。仙骨と寛骨の間にあるのが仙腸関節です。
仙腸関節は大きく動く関節ではありません。しかし、生体内で小さな回旋や移動が起こることは、画像や三次元計測を用いた研究でも確認されています。健康な人を調べた研究では平均約1.8度から1.9度の回旋と、1ミリ未満の移動が報告されています。近年のCT動態解析でも、股関節への負荷に伴う小さな仙腸関節運動が測定されています。
つまり「仙腸関節はまったく動かない」という説明は正確ではありません。
一方で、動く量は非常に小さい。ここも重要です。肉眼で大きく骨が外れている、片側を強く押せば元の場所へ戻る、といった単純な説明ではありません。
私がいう「骨盤の歪み」とは何か
私が臨床で使う「骨盤の歪み」は、骨そのものが変形したという意味ではありません。
カイロプラクティックでは、サブラクセーション(Subluxation/骨格のズレ)という見方をします。これは医療上の脱臼ではなく、関節が本来参加するべき方向や範囲の動きへ十分に参加できず、周囲の関節や筋肉が代わりに働いている可能性を考えるものです。
骨盤でいえば、左右の仙腸関節が同じように動いているか、前後方向や回旋方向の動きに差がないか、腰椎や股関節が過剰に補っていないかを確認します。
したがって、「右の骨盤が高く見えるから右が悪い」とは限りません。
右側が動かないために高く見える場合もあれば、左側の動きによって右側が相対的に高く見えている場合もあります。見た目は入口であり、答えではありません。
触っただけで骨盤の状態を決めない理由
ライブでは、骨盤の高さを確認するStatic palpationと、実際に関節へ動きを加えるMotion palpationの違いについて話しました。
Static palpation(静的パルペーション)は、身体を静止させた状態で触れ、骨の位置関係、筋肉や軟部組織の張り、左右差などを確認する触診です。
Motion palpation(モーション・パルペーション)は、関節を実際に動かしながら、どちら側がどの方向へ動きにくいかを手で確認します。
ただし、仙腸関節の触診検査については、単独検査の検査者間一致や妥当性に限界があることも報告されています。複数の系統的レビューは、一つの触診テストだけで仙腸関節の状態を確定することへ慎重な見方を示しています。
だから私は、触診一つだけで決めません。
History(ヒストリー/問診)、姿勢、症状が出る動作、関節可動域、左右差、静的パルペーション、モーション・パルペーション、施術後のReassessment(再評価)までをつなげて考えます。
脚の長さだけで骨盤の歪みを確定できるのか
寝た状態で左右の脚の長さが違って見えることはあります。
しかし、その理由は骨盤だけとは限りません。股関節や膝の位置、足首、筋肉の緊張、寝る姿勢、測定方法によっても見え方は変わります。
先天的な骨の長さの違いがある方もいます。
そのため、脚長差は身体を見る手掛かりの一つにはなりますが、脚の長さだけで「骨盤が確実に歪んでいる」と自己診断することは勧めません。
大切なのは、脚長差があるかどうかより、姿勢や動作を変えた時に左右差がどう変化するか、腰、骨盤、股関節の動きと一致しているかです。
Dr.Kazは骨盤をどう確認するのか
私は最初に骨盤だけを触るのではなく、なぜ骨盤を確認する必要があるのかをヒストリーから整理します。
- 痛みや違和感が始まった時期ときっかけ
- 腰、臀部、股関節、脚のどこに症状があるか
- 座る、立つ、歩く、寝返りのどの動作で変化するか
- 過去の転倒、出産、スポーツ、手術歴
- 医療機関で受けた検査と説明
- これまで受けたケアと、その後の変化
そのうえで、立位、前屈、後屈、片脚立ち、歩行などを確認します。骨盤だけでなく、腰椎と股関節がどの程度動作へ参加しているかも見ます。
アジャストメントが必要と判断した場合は、音を鳴らすことを目的とせず、確認した関節と方向へ力を調整して行います。
施術後は、最初と同じ動作や可動域を再評価します。「音が鳴ったから成功」ではなく、動きや左右差がどう変化したかまで確認することが必要です。
骨盤だけでなく軟部組織も確認する
関節側の動きが変わっても、皮膚、皮下組織、筋膜周辺などの軟部組織に動きにくさが残る場合があります。
たとえば骨盤の動きは変化したのに、腰や臀部の突っ張りが残る。股関節を動かすと片側だけ皮膚や軟部組織が引かれる。歩行時の左右差が残る。
このような場合、当院ではメディセルを使用し、軟部組織側の滑走性や左右差を確認します。
カイロプラクティックで関節・骨格側を確認し、メディセルで軟部組織側を確認する。必要に応じて両方を組み合わせ、同じ動作を再評価することが、Dr.Kazの中核コンビネーションです。
公式サイトでも、カイロプラクティックとメディセルケアを二つの施術の柱として案内しています。
医療機関への相談を優先する症状
骨盤や腰の痛みに加えて、次の症状がある場合は医療機関への相談を優先してください。
- 大きな転倒や交通事故後の強い痛み
- 発熱や強い体調不良を伴う痛み
- 急速に進む脚の筋力低下
- 排尿や排便の異常
- 股の間や肛門周辺の感覚低下
新しく発生した排尿・排便機能の変化や会陰部のしびれを伴う強い腰痛は、緊急評価が必要な状態の可能性があります。
この記事の結論
骨盤を構成する仙腸関節には、小さいながらも実際の動きがあります。
ただし、骨盤が大きく変形するという意味ではなく、見た目や脚長差だけで状態を確定することもできません。
私が確認するのは、仙腸関節の動き、腰椎と股関節の連動、代償動作、軟部組織の滑走性です。アジャストメントやメディセルを行った後は、必ず同じ動作を再評価します。
Dr.Kazへの相談・予約
次のような方はご相談ください。
- 骨盤が歪んでいると言われたが、何を根拠にした説明か分からない方
- 腰、臀部、股関節の左右差を繰り返す方
- 骨盤だけでなく腰椎や股関節まで確認してほしい方
- 関節と筋膜周辺の両面から状態を見てほしい方
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この記事の一次情報
ライブ開催日
2026年7月23日
元動画
骨盤は本当に歪むのか
該当部分から再生
https://www.youtube.com/watch?v=CvQK7FQ2R3s&t=192s
文字起こし資料
参考資料
Three-dimensional movements of the sacroiliac joint: a systematic review of the literature and assessment of clinical utility
Journal of Manual & Manipulative Therapy
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19119382/
The mobility of the sacroiliac joint in healthy subjects
Spine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8919124/
Assessment of the sacroiliac joint with computed tomography motion analysis
European Radiology Experimental
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38240723/
Validity and Reliability of Palpatory Clinical Tests of Sacroiliac Joint Mobility
Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33896601/
Clinimetric properties of sacroiliac joint mobility tests
Musculoskeletal Science and Practice
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31744776/
著者情報
著者: 長澤一輝(ながさわ かずてる)
英語表記: Kazuteru Nagasawa, D.C.
学位: Doctor of Chiropractic(D.C.)
米国Cleveland Chiropractic College卒業。1999年にDoctor of Chiropractic専門職学位を取得。米国滞在8年、臨床歴25年以上。
活動拠点: 銀座・虎ノ門エリア、福岡天神
