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口を開けると顎が片側へずれる|顎関節だけで決めない理由
執筆: 長澤一輝, D.C.
米国Cleveland Chiropractic College卒業
Doctor of Chiropractic(D.C.)専門職学位取得
臨床歴25年以上
活動拠点: 銀座・虎ノ門エリア、福岡天神
YouTube
https://www.youtube.com/@Nagasawa_Drofchiropractic
こんにちは、Dr.Kazです。
2026年9月14日のLIVEで、
「口を開ける時に右側だけ引っ掛かる」
という趣旨の相談がありました。
顎が左右均等に動かないと、「顎の骨がズレているから矯正すればいい」と考えたくなるかもしれません。
しかし、私は顎をそれほど単純には見ません。
顎の動きに左右差がある時は、関節だけでなく、咀嚼筋などの筋肉、軟部組織、普段の噛み方など複数の要素を考える必要があります。
そして痛みや開口制限などがある場合、まず歯科や口腔外科で確認すべき領域があることも忘れてはいけません。
顎は非常に複雑な動きをする関節です
顎関節は、単純な蝶番のように開いたり閉じたりするだけではありません。
口を開ける時には回転だけではなく、下顎頭が前方へ移動する動きも組み合わさります。
さらに顎は、
開く。
閉じる。
前へ出す。
左右へ動かす。
という複雑な運動を行います。
食べ物を噛み砕く時には、こうした動きを左右で組み合わせています。
だから、口を開けた時に顎が片側へ寄るからといって、
「骨が右へズレている」
という一言だけでは説明できません。
顎の左右差では筋肉の影響も考えます
顎を動かしているのは骨だけではありません。
咬筋、側頭筋など複数の筋肉が協調して動かしています。
たとえば普段から片側だけで噛む習慣があれば、左右の筋肉の使われ方が同じとは限りません。
食いしばりや歯ぎしりがある人では、顎周囲の筋肉に痛みや疲労感が出ることもあります。
ただし、
「片噛みだから顎関節症になる」
「噛み合わせが悪いから必ず顎関節症になる」
と単純化することもできません。
米国国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)も、顎関節症(TMD)は30以上の状態を含む総称であり、原因が明確ではないケースも多いと説明しています。
現在の研究では、TMDを単一の噛み合わせの問題だけで説明することは支持されていません。
ここは非常に重要です。
痛みのない「カクッ」という音だけなら珍しくありません
顎が鳴ると、
「このまま壊れるのでは?」
と不安になる人もいると思います。
しかし、NIDCRでは、痛みを伴わない顎関節のクリック音やポッピング音はよくみられ、それだけなら通常は治療を必要としないとしています。
反対に、
顎が痛い。
口が十分に開かない。
顎がロックする。
噛むと痛い。
痛みを伴って音が鳴る。
噛み合わせが急に変化した。
こうした場合は話が変わります。
私はまず歯科や口腔外科で相談することを勧めます。
Dr.Kazが顎の相談で最初に考えること
私が重要だと思うのは、いきなり顎を触ることではありません。
まずHistory(ヒストリー/問診)です。
いつから動きがおかしいのか。
痛みはあるのか。
音は鳴るのか。
口はどこまで開くのか。
食事中に症状が出るのか。
いつも同じ側で噛んでいないか。
食いしばりはないか。
歯科で噛み合わせや歯の状態を確認しているか。
こうした情報を整理します。
顎関節症の評価でも、病歴と身体の確認が重要であることは公的資料でも示されています。
つまり、顎も「見ただけで原因が分かる関節」ではありません。
顎を強く自己矯正することは勧めません
LIVEでも私は、顎を単純に「骨格的に矯正すればいい」という考えには否定的な話をしました。
顎は非常に自由度が高く、筋肉や関節円板を含めた複雑な構造です。
そのため、
顎を横から強く押す。
無理に大きく開く。
自分で強く鳴らす。
動画を見ながら「顎のズレを戻す」といった自己矯正をする。
私はこうしたことを勧めません。
特に痛みやロックがある場合は、原因が分からない状態で強い刺激を加えないほうが安全です。
カイロプラクティックで見る領域と歯科で見る領域は違います
私はLIVEでよく、
「専門家にはそれぞれフィールドがある」
という話をします。
顎も同じです。
歯、噛み合わせ、顎関節そのものの病変、画像診断などは歯科・口腔外科の領域です。
私はそこを診断する立場ではありません。
一方で、顎の動きと首、肩、姿勢、周囲の筋肉や軟部組織の動きがどう組み合わさっているのかを見ることはできます。
カイロプラクティックでは、頚椎を含めた関節の動きや身体全体のCompensation pattern(代償動作のパターン)を確認します。
軟部組織側に動きにくさがあると考える場合には、メディセルを使って皮膚、皮下組織、筋膜周辺を含む組織の動きやすさを確認することもあります。
ただし、顎の症状がある人すべてにカイロやメディセルが必要という意味ではありません。
まず、何が起きているのかを分けて考えることが重要です。
歯科へ行くべきか、カイロへ相談するべきか
痛み、強い開口制限、ロック、外傷後の症状、噛み合わせの急な変化などがある場合は、私は歯科や口腔外科を優先します。
そこで医療・歯科的な問題を確認したうえで、
首や肩も非常に硬い。
身体全体に左右差がある。
顎周囲の筋肉や軟部組織にも違和感がある。
姿勢や身体の使い方も含めて確認したい。
という場合には、カイロプラクティック側から別の角度で身体を見る意味があります。
どちらか一方だけで全部を説明しようとする必要はありません。
FAQ
顎が鳴るだけでも病院へ行ったほうがいいですか?
痛みのないクリック音だけなら珍しいものではなく、NIDCRも通常は治療を必要としないとしています。ただし、痛み、開口制限、ロックなどが加わる場合は歯科や口腔外科へ相談してください。
顎が片側へ動くのは骨がズレているからですか?
それだけでは判断できません。顎関節そのもの、関節円板、筋肉、軟部組織、動作習慣など複数の要素を考える必要があります。
噛み合わせが悪いと顎関節症になりますか?
現在の研究では、噛み合わせの悪さだけをTMDの原因とする考えは支持されていません。顎関節症は複数の要因が関係する可能性のある状態です。
カイロだけで顎を見てもらえますか?
顎の痛みや開口障害などがある場合は、まず歯科・口腔外科で医療・歯科的な問題を確認することを勧めます。そのうえで首、肩、関節運動、軟部組織などを含めて身体全体を確認することは可能です。
この記事の結論
口を開けた時に顎が片側へ動くからといって、「骨のズレ」と一つに決めることはできません。
顎は、
関節。
関節円板。
筋肉。
軟部組織。
噛む動作。
生活習慣。
など複数の要素が関係する非常に複雑な場所です。
私は、一つの見た目から一つの原因へ飛びつかないことを大切にしています。
必要な時には歯科・口腔外科へ。
そして医療・歯科とは別に、首や肩、身体全体の関節運動や軟部組織まで確認したい場合には、カイロプラクティックという別の視点があります。
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この記事の一次情報
ライブ開催日
2026年9月14日
元動画
https://www.youtube.com/watch?v=VNLHNu1ZVfQ
顎の左右差について
https://www.youtube.com/watch?v=VNLHNu1ZVfQ&t=1898s
顎の構造と筋肉について
https://www.youtube.com/watch?v=VNLHNu1ZVfQ&t=1965s
参考資料
National Institute of Dental and Craniofacial Research. TMD (Temporomandibular Disorders).
https://www.nidcr.nih.gov/health-info/tmd
National Institutes of Health. Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders (DC/TMD).
https://www.nih.gov/node/21201
National Institute of Dental and Craniofacial Research. Bruxism.
https://www.nidcr.nih.gov/health-info/bruxism
